ひとつところに永く暮らしたことがないひとは
きっとたくさんいると思う。
故郷という感覚に疎い
そういうひとほど、
知らない街のにおいに
敏感になるのかもしれない。
街のあたたかさに
気づくのかもしれない。
何故、描くのか。
文章を書くことも、ピアノを弾くことも、絵を描くことも、写真を撮ることも、読むことも、
すべてはひとつのところに回帰していくのだろう。
くじらは、夏のアラスカの海で食べ
冬の小笠原の海で子育てをする。
作家ベッシー・ヘッドは、アパルトヘイト下の南アフリカで
黒人の父親と白人の母親とのあいだに生まれた。
彼女が死んで15年経った今、
彼女の文章と狂気に自分を見出したわたしは、
どう「描く」べきなのか。
わたしのまわりで、地球はまわっていく。
あふりかくじら
2002年